アンバー

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イエロー系

悠久の時を秘めたアンバーの魅力

木の樹脂が、長い年月をかけて宝石へと変わる過程をご存知でしょうか。琥珀と呼ばれるこの宝石は、樹木の樹脂が化石化したものです。数百万年、数千万年、あるいは数億年という想像もつかないような時間を経て、樹脂は固まり、美しい輝きを放つ琥珀へと変化します。琥珀の物語は、樹木が傷ついた時に始まります。木の幹に傷がつくと、そこからまるで血のように樹脂が流れ出します。これは樹木が自らを守るための自然の防御反応です。この粘り気のある液体は、傷口を覆うことで、細菌や害虫の侵入を防ぎ、傷を癒やす役割を担っています。 この樹脂が、やがて琥珀へと変化を遂げる鍵は、地中に埋もれることです。地面に落ちた樹脂は、土や砂、落ち葉などに埋もれていきます。地中深くで、樹脂は空気に触れることなく、静かに時を過ごします。そして、地層の圧力や地熱の影響を受けながら、長い時間をかけて硬化していきます。この過程で、樹脂の成分は変化し、安定した状態へと変化していきます。数百万年という気の遠くなるような時間が過ぎ、ついに樹脂は琥珀へと姿を変えます。琥珀の中には、しばしば昆虫や植物の葉、小さな生き物などが閉じ込められています。まるでタイムカプセルのように、太古の生物をそのまま閉じ込めた琥珀は、当時の地球環境を知るための貴重な手がかりとなります。琥珀を研究することで、過去の生態系や気候変動などを解明する手がかりが得られるのです。まさに、琥珀は地球の歴史を語る貴重な証人と言えるでしょう。
デザイン

アーツアンドクラフツ:自然回帰の芸術

19世紀後半、ヴィクトリア朝時代の末期に「ものづくりと美術工芸運動」と呼ばれる大きなうねりが生まれました。これは、工場で作られた、同じ形をした品物があふれるようになった時代への反発でした。 当時の工場で作られた品物は、便利な反面、どこか味気ないものが多く、美しさに欠けると感じる職人たちが大勢いました。彼らは、人の手で作られた温かみや、自然の恵みを生かした材料の良さを大切にしたいと考えました。 そこで立ち上がったのが「ものづくりと美術工芸運動」です。彼らは、金づちで叩いた跡など、人の手で作られた証をわざと作品に残しました。滑らかで均一な工場製品とは違い、一つ一つに個性があり、人の手の温もりを感じさせるものづくりを目指したのです。 この運動は、産業革命によって大きく変わってしまった社会への反省でもありました。機械によって便利になった一方で、人々の創造力や自然との繋がりが薄れていく危機感を抱いていた人々は、「ものづくりと美術工芸運動」を通して、失われつつある大切なものを取り戻そうとしたのです。 当時、人々は、大量生産によって作られた同じような品物に囲まれて生活していました。しかし、「ものづくりと美術工芸運動」は、一つ一つ心を込めて作られたものの大切さを人々に思い出させました。そして、自然の素材が持つ美しさや力強さに改めて目を向けさせ、ものづくりの原点に立ち返るきっかけを与えたのです。
イエロー系

神秘の宝石、琥珀の魅力

琥珀は、太古の樹木の樹脂が長い年月をかけて化石化したものです。琥珀の多くは、およそ3000万年から6000万年前、新生代と呼ばれる時代に誕生しました。当時、地球上には広大な針葉樹の森が広がっており、その森に生息していた松柏科の樹木から流れ出た樹脂が、琥珀の起源となっています。 樹木から流れ出た樹脂は、はじめは粘り気のある液体ですが、地中に埋もれることで長い年月をかけて硬化していきます。地中の熱や圧力、そして土壌中の様々な鉱物との相互作用が、樹脂の成分を変化させ、琥珀へと変貌させます。この過程には数千万年という途方もない時間がかかり、まるで自然が時間をかけて作り上げた芸術品といえます。 琥珀の中には、古代の昆虫や植物の葉、花びらなどが閉じ込められていることがあります。これらは、樹脂がまだ液体だった頃に付着し、そのまま琥珀の中に閉じ込められたものです。これらの内包物は、当時の生態系を知るための貴重な資料となるだけでなく、琥珀に独特の風情と魅力を与えています。まるで太古の時間を閉じ込めたタイムカプセルのようです。 琥珀の色は、金色からオレンジ色、赤褐色、そして稀に緑色や青色など、実に様々です。この色の違いは、樹脂に含まれる不純物の種類や量、そして生成過程における温度や圧力などの条件によって生じます。また、酸化の度合いによっても色が変化します。それぞれの琥珀が異なる色合いを持つため、世界に一つとして同じものがない、まさに自然の造形美といえます。