
アーツアンドクラフツ:自然回帰の芸術
19世紀後半、ヴィクトリア朝時代の末期に「ものづくりと美術工芸運動」と呼ばれる大きなうねりが生まれました。これは、工場で作られた、同じ形をした品物があふれるようになった時代への反発でした。
当時の工場で作られた品物は、便利な反面、どこか味気ないものが多く、美しさに欠けると感じる職人たちが大勢いました。彼らは、人の手で作られた温かみや、自然の恵みを生かした材料の良さを大切にしたいと考えました。
そこで立ち上がったのが「ものづくりと美術工芸運動」です。彼らは、金づちで叩いた跡など、人の手で作られた証をわざと作品に残しました。滑らかで均一な工場製品とは違い、一つ一つに個性があり、人の手の温もりを感じさせるものづくりを目指したのです。
この運動は、産業革命によって大きく変わってしまった社会への反省でもありました。機械によって便利になった一方で、人々の創造力や自然との繋がりが薄れていく危機感を抱いていた人々は、「ものづくりと美術工芸運動」を通して、失われつつある大切なものを取り戻そうとしたのです。
当時、人々は、大量生産によって作られた同じような品物に囲まれて生活していました。しかし、「ものづくりと美術工芸運動」は、一つ一つ心を込めて作られたものの大切さを人々に思い出させました。そして、自然の素材が持つ美しさや力強さに改めて目を向けさせ、ものづくりの原点に立ち返るきっかけを与えたのです。