カッティング

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宝石のカレット:その役割と重要性

宝石を彩る輝き。その輝きを生み出す一つ一つ丁寧に研磨された面をファセットと呼びます。宝石のきらめきは、光がこのファセットで反射、屈折することで生まれます。カレットとは、宝石の中でも特に、尖った底の部分であるパビリオンの先端に位置する小さな面のことを指します。宝石の最下部に位置するこの小さな面は、平らに研磨されていることもあれば、研磨されずに尖ったままの状態であることもあります。まるで王冠の頂点のように、宝石の輝きの最終地点を担う重要な部分と言えるでしょう。 カレットの起源は古く、十五世紀頃にテーブルカットと呼ばれる研磨方法が確立される過程で登場しました。テーブルカットとは、宝石の上部に大きな平らな面を作る研磨方法で、この面のことをテーブル面と呼びます。このテーブル面を作る際に、底面にもテーブル面と平行な新しい面が加えられました。この底面に新しく加えられた面のことを「Culus(クルス)」と呼び、ラテン語で「底」を意味する言葉が語源となっています。このクルスこそが、カレットの始まりと言えるでしょう。 カレットには、宝石、特に壊れやすい宝石を守るという重要な役割があります。例えば、宝石の代表格とも言えるダイヤモンド。ダイヤモンドは世界で最も硬い鉱物として知られていますが、硬いということは、その反面、衝撃に弱く、割れやすいという側面も持ち合わせています。もしダイヤモンドの底が尖ったままの状態だと、落下などの衝撃が加わった際に、その尖った部分から力が集中し、破損してしまう恐れがあります。カレットは、底面の面積を広げることで、一点に集中する衝撃を分散させ、宝石が破損するのを防ぐクッションの役割を果たしているのです。 カレットは宝石のファセットの一つとして数えられることもありますが、尖ったままのカレットの場合はファセットとしては数えられない場合もあります。研磨の有無によってファセット数に含まれるかどうかが変わる点も、カレットの興味深い特徴の一つと言えるでしょう。