
神秘の音色、サヌカイト:歴史と魅力
サヌカイトは、黒色で硬く緻密な見た目を持つ火山岩の一種、安山岩です。その産地は香川県の讃岐地方を中心とした限られた地域に限られ、世界的に見ても珍しい貴重な石です。まるで黒曜石のように鋭く割れる性質を持ち、その断面は貝殻状の模様を描きます。この石の起源は、今から約千五百万年前の新生代第三紀にさかのぼります。瀬戸内火山帯の活動によって生まれた溶岩が冷え固まり、サヌカイトが形成されました。古来より人々はこの石の鋭い割れ目を利用し、石器や刃物として生活に役立ててきました。
サヌカイトという名は、明治時代に日本各地の地質を調査したドイツの地質学者、ナウマン博士に由来します。博士が香川県で採取したこの石を、知人のバインシェンク氏が研究し、讃岐地方の古い呼び名である「サヌキ」にちなんで「Sanukite(サヌキット)」と命名しました。その後、この英語読みである「サヌカイト」という名前が定着し、現在に至ります。
サヌカイトは石器以外にも、独特の音色を奏でる楽器としても利用されてきました。石を叩くと、まるで金属を叩いたかのような高く澄んだ音が響きます。その音色は「カンカン石」という別名にも表れています。近年では、その音色の美しさから、楽器やオブジェとして注目を集め、様々な形で人々の生活に彩りを添えています。歴史と文化、そして自然の神秘が凝縮されたサヌカイトは、まさに讃岐地方の宝と言えるでしょう。