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ベークライト:不景気の宝石

1909年、レオ・ベークランドという人物によって新たな物質が世に送り出されました。それはベークライトと呼ばれる、人工的に作り出された樹脂でした。この画期的な物質は、特許を取得し、当初は工場で作られる製品の材料として開発が進められました。しかし、人々はすぐにベークライトの秘めた可能性に気づいたのです。 ベークライトには、熱を加えると柔らかく形を変えられ、冷やすと再び硬くなる性質がありました。つまり、様々な形に加工することが容易だったのです。さらに、一度形が固定されると、火であぶっても燃えにくいという特性も持っていました。これらの特性は、装飾品を作る上で非常に有利でした。 20世紀初頭、人々はベークライトの可能性に着目し、宝飾品への応用を始めました。指輪や腕輪、胸飾りなど、多種多様なデザインの宝飾品がベークライトを用いて作られました。ベークライトは職人の手によって、滑らかな曲線を持つものや、幾何学模様が施されたものなど、自由自在な形に姿を変えていきました。 また、ベークライトは着色も容易でした。赤、青、黄、緑など、様々な色を混ぜ込むことで、カラフルで斬新なデザインの宝飾品が次々と生み出されました。デザイナーたちはその特性を最大限に活かし、人々の目を惹く美しい宝飾品を作り上げました。 こうして、ベークライトは宝飾業界で急速に人気を博し、多くの人々に愛される素材となりました。かつて工業製品の材料として開発されたベークライトは、人々の創造力によって美しく変身し、時代を彩る宝飾品として輝きを放ったのです。