
神秘の緑、モルダバイト
モルダバイトは、深い緑色の輝きを放つガラス質の石であり、チェコ共和国のモルダウ川流域でしか見つからないという大変珍しい特徴を持っています。その誕生は、はるか昔、宇宙からの訪問者によってもたらされました。およそ1500万年前に、巨大な隕石が地球に衝突した時のことです。この衝突は想像を絶するほどのエネルギーを放出し、地表の岩石を一瞬にして溶かし、大気を切り裂いて高く舞い上がらせました。そして、溶けた岩石が空中で急激に冷やされることで、ガラス質の物質へと変化しました。これがモルダバイトの起源です。
モルダバイトは、テクタイトと呼ばれる天然ガラスの一種に分類されます。テクタイトは、隕石衝突によって生成される特殊な物質であり、その名の由来はギリシャ語で「溶けた」を意味する言葉にちなんでいます。モルダバイトは、数あるテクタイトの中でも特に美しい緑色をしており、この緑色は微量の酸化鉄によるものと考えられています。また、表面には独特の模様や凹凸が見られ、これは空高く舞い上がった溶けた岩石が冷えて固まる過程で形成されたものです。
モルダウ川流域以外では発見されないことから、モルダバイトは非常に希少価値が高く、コレクターや宝石愛好家の間で珍重されています。加えて、宇宙から来た隕石に由来するという神秘的な起源から、特別な力を持つ石として、古くから人々に大切にされてきました。宇宙のエネルギーを宿し、持ち主に幸運をもたらすと信じられています。その神秘的な魅力と希少性から、モルダバイトは人々を魅了し続けているのです。