
マホガニーオブシディアン:深紅の神秘
黒曜石は、火山から流れ出た溶岩が、まるで一瞬で凍ついたかのように急速に冷え固まってできた天然のガラスです。鉱物のように結晶構造を持たないため、厳密には鉱物の仲間に入れてもらえません。しかし、その不思議な成り立ちと、光をとおす性質、鋭く割れる性質から、古くから人々に珍重されてきました。
黒曜石といっても、一色ではありません。漆黒のものだけでなく、灰色や茶色、またマホガニーオブシディアンのように赤褐色のものもあります。マホガニーオブシディアンは、高級家具に使われるマホガニーという木材に似た美しい模様を持っていることから、その名がつけられました。黒曜石に含まれる鉄分が酸化することで、このような赤褐色になります。落ち着いた黒色の中に、流れるような赤褐色の模様が入り混じり、まるで自然が描いた絵画のようです。見る角度や光の当たり方によって、様々な表情を見せるのも魅力の一つです。
この独特の模様は、溶岩が冷えて固まる過程で、鉄分が濃集した部分が赤褐色になったと考えられています。溶岩の流れや温度変化など、様々な条件が重なって生まれるため、一つとして同じ模様はありません。まさに自然が生み出した芸術品といえるでしょう。落ち着いた色合いの中に華やかさも感じさせ、力強さと美しさを兼ね備えています。そのため、アクセサリーとして身に着けたり、置物として飾ったりと、様々な形で楽しまれています。古くは矢じりや刃物などにも使われていたそうで、その鋭い断面が、黒曜石の持つ独特の性質をよく表しています。黒曜石は、地球の活動が生み出した不思議な石であり、その魅力は時代を超えて人々を魅了し続けています。