
古代ローマのブッラ:少年のお守り
古代ローマ時代、男児が身に着けていたお守り、それがブッラです。現代の locket pendant に似て、二枚の凹状の板を合わせて作られた空洞のペンダントです。まるで小さな入れ物のようなこのペンダントには、持ち主を守るため、様々なものがしまわれていたと考えられています。例えば、魔除けの呪文を書いた巻物です。文字の力によって災いから身を守ろうとしたのでしょう。また、良い香りがする香料を入れていたという説もあります。良い香りは邪気を払うと信じられていたのかもしれません。
このブッラは、ローマ社会に広く浸透した風習でした。裕福な家庭の子供はもちろん、そうでない家庭の子供も、幼い頃にブッラを身に着けていました。身分や貧富の差に関わらず、広く普及していたことは、当時のローマ社会において、子供を守るということがいかに重要視されていたかを物語っています。
ブッラの材質は様々でした。金や銀といった高価な金属で作られた豪華なものもありました。一方で、革や布といった手軽な素材で作られた簡素なものも存在しました。このように様々な材質のブッラが存在していたことは、当時のローマ社会における経済的な格差を反映していると言えるでしょう。高価な金属でできたブッラは、裕福な家庭の象徴であり、社会的な地位を示すものでもあったのかもしれません。一方で、布や革でできたブッラは、たとえ高価なものではなくても、子供を守るという親の愛情が込められていたに違いありません。