
神秘の木材、シャム柿の魅力
シャム柿という名は、どこか異国情緒を感じさせ、タイ原産の柿の仲間を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実際は柿とは全く関係のないムラサキ科の広葉樹です。主な産地は中南米のメキシコやグアテマラといった地域で、タイとは全く異なる環境で育ちます。では、なぜ「シャム柿」と呼ばれるようになったのでしょうか?その由来は、木材輸入業者が日本に流通させる際に名付けたという、少し変わった経緯にあります。タイの古名である「シャム」という響きと、柿の木のような美しい木目が結びつき、「シャム柿」という商品名が生まれたと言われています。近年では、英語名である「ジリコテ」も知られるようになってきましたが、日本では現在も「シャム柿」という名前が広く使われています。その神秘的な響きが、この木材の魅力をさらに引き立てているのかもしれません。
木材としてのシャム柿は、堅牢で耐久性が高いという特徴があります。緻密で重厚な木質は、高級家具や仏具の材料として古くから珍重されてきました。特に、黒に近い濃い茶色と明るい茶色の縞模様が織りなす美しい木目は、見る者を惹きつけ、独特の存在感を放ちます。加えて、近年ではギターの材料としても高い人気を誇っています。シャム柿で作られたギターは、明るく澄んだ音色と豊かな倍音が特徴で、多くの音楽家を魅了しています。希少価値が高く、加工が難しい木材であるため、シャム柿で作られた楽器は高価なものとなりますが、その音色と美しさは、まさに唯一無二と言えるでしょう。このように、シャム柿は、家具、仏具、楽器など、様々な分野でその魅力を発揮し続けている、貴重な木材と言えるでしょう。