
柘植:時を超える木の魅力
柘植は、ツゲ科ツゲ属に属する常緑の広葉樹です。一年を通して緑の葉を茂らせ、主に西日本の温暖な地域で自生しています。庭木として古くから人々に愛され、家の周りの生垣や庭のアクセントとして植えられてきました。
柘植の木は、それほど大きくはならず、樹高は平均して1メートルから5メートルほどです。成長はゆっくりとしており、緻密で硬い木材を育みます。この木材は、非常に割れにくく、また長い年月を経ても変形が少ないという優れた特徴を持っています。こうした性質から、印鑑や版木、櫛、将棋の駒など、細かい加工が必要とされる物や、長く使い続けられる物の材料として重宝されてきました。緻密な木質は、彫刻にも適しており、繊細な模様を刻むことができます。
柘植の木材は、淡い黄色のあたたかみのある色味をしています。使い込むほどに、ゆっくりと飴色に変化していくという特徴も、柘植の魅力の一つです。手に馴染むなめらかな質感と、時とともに深まる色合いは、所有する喜びを与え、人々を魅了し続けています。また、柘植は成長が遅いため、年輪が細かく詰まっており、それが硬く丈夫な木材を生み出す要因となっています。この緻密さも、柘植が様々な工芸品に用いられる理由の一つと言えるでしょう。数珠などの仏具にも用いられることから、柘植は神聖な木として大切にされてきた歴史も感じられます。