17世紀

記事数:(4)

デザイン

セヴィニェ:宝石のリボンが彩る優美な世界

セヴィニェとは、華やかな飾り紐細工の胸飾りです。宝石をふんだんに使い、優美な曲線を描くリボン型が特徴で、主にドレスの胸元を彩るために用いられました。その名は、太陽王として知られるルイ14世の治世下のフランスで、宮廷一の洒落者として名を馳せたセヴィニェ侯爵夫人に由来します。17世紀から18世紀にかけて、セヴィニェ侯爵夫人は、当時の流行の最先端をいく存在でした。彼女が胸元に飾ったこの優美なリボン型の飾りは、たちまち貴族たちの間で注目の的となり、瞬く間に広まりました。彼女の名前がそのままこの胸飾りの名前として定着したことが、セヴィニェ侯爵夫人の絶大な影響力を物語っています。 初期のセヴィニェは、簡素なリボン型のものが主流でした。しかし、時代が下るにつれて、宮廷文化の洗練とともに、セヴィニェのデザインもより複雑で手の込んだものへと変化を遂げました。左右非対称の斬新なデザインや、真珠、様々な宝石、貴金属など、高価な材料を惜しげもなく用いた豪華絢爛なセヴィニェが数多く作られるようになったのです。ダイヤモンドのきらめき、ルビーの燃えるような赤、サファイアの深い青、エメラルドの鮮やかな緑など、宝石の輝きがリボンの曲線美と相まって、見る者を魅了しました。 今日では、セヴィニェは骨董品として扱われることが多く、美術館などで目にする機会もあるでしょう。時を経てもなお、セヴィニェの優美なデザインは、現代の首飾りや胸飾りのデザインにも大きな影響を与え続けています。宝石とリボン細工の芸術が見事に融合したセヴィニェは、まさに時代を超えて愛される美の象徴と言えるでしょう。
その他

淑女の必需品、エテュイの魅力

17世紀から19世紀にかけて、ヨーロッパの貴婦人たちの間で流行した、小さな筒状の道具入れがありました。フランス語で「入れ物」という意味を持つ、エテュイと呼ばれるものです。まるで小さな宝箱のように、当時の女性たちは日々の暮らしに欠かせない細々とした品々を、この中に大切にしまっていました。裁縫に使う針や糸、文字を書くための羽根ペンやインク壺、お化粧に使う小さな鏡や紅など、現代の小さな鞄のように、様々な道具がエテュイの中に収められていたのです。 エテュイはただ持ち歩くだけでなく、身に付ける装飾品としての役割も担っていました。外出する際には、シャトレーンと呼ばれる留め金や鎖を使って、帯やスカートに吊り下げて持ち運んでいたのです。そのため、エテュイの素材や装飾は非常に凝ったものが多く、金や銀、宝石や象牙などが使われ、高度な職人技によって美しい模様が施されていました。それぞれの貴婦人の個性や好み、社会的な立場が反映された、まさに小さな芸術品と言えるでしょう。 当時の絵画や資料を見ると、貴婦人たちが優雅にエテュイを身に付けている様子が描かれています。社交の場では、この小さな宝箱を開けて必要な道具を取り出す仕草が、洗練された所作として見られていたのでしょう。実用性と装飾性を兼ね備えたエテュイは、当時の女性たちの生活には欠かせない、大切な品であったに違いありません。まるで現代のスマートフォンケースのように、常に持ち歩くことで個性を表現し、日々の暮らしを彩る、そんな存在だったのかもしれません。
デザイン

装飾房飾り:時代を超える優美な技巧

房飾りとは、家具や衣服の縁に華を添える、繊細で美しい装飾技法です。フランス語で「パッサムントリー」と呼ばれるこの技法は、金や銀などの金属糸や、絹糸、毛糸などを用いて、複雑で豪華な模様を作り上げます。 房飾りの起源は、白い麻布で作られたレースが衣服に用いられたことに遡ります。当初は簡素なものでしたが、時代と共に技術が発展し、様々な素材や技法が取り入れられるようになりました。16世紀のフランスでは、この技法に特化した職人組合が設立され、様々な房飾りの技法が確立されました。職人の手によって緻密に編まれた房飾りは、王侯貴族の衣服や調度品を彩り、その高い技術と芸術性は高く評価されました。 17世紀から18世紀にかけて、房飾りは最盛期を迎えました。宝飾品や服飾のデザインにも大きな影響を与え、当時の流行を牽引しました。金糸や銀糸をふんだんに使った豪華絢爛な房飾りは、宮廷文化を象徴する装飾として、人々の憧れの的となりました。宮廷衣装やドレス、カーテン、タペストリー、クッションなど、あらゆるものに房飾りが施され、華やかさを添えました。当時の絵画や彫刻にも、房飾りをあしらった衣服をまとった貴族たちの姿が数多く描かれています。 現代においても、房飾りの優美な魅力は色褪せることなく、ファッションやインテリアデザインに広く用いられています。伝統的な技法を継承する職人たちは、今もなお精巧な作品を生み出し続けています。また、現代の素材や技術を取り入れた新しい房飾りも登場し、その表現の幅はさらに広がっています。時代を超えて愛される房飾りは、これからも人々の心を魅了し続けることでしょう。
デザイン

バロック時代のパワーストーンと鉱石

17世紀初頭から18世紀半ばにかけて、ヨーロッパで花開いた美術様式、それがバロック様式です。建築や彫刻、絵画、音楽など、様々な分野でこの独特の表現を見ることができます。華麗で壮大な雰囲気、そして躍動感あふれる大胆な表現こそ、バロック様式の真髄と言えるでしょう。宝飾品の世界においても、この時代の影響は色濃く反映されています。それ以前は、彩色を施した焼き付け技法を用いた宝飾品が主流でしたが、バロック時代に入ると、天然の輝きを持つ真珠や、ルビー、エメラルド、サファイアといった色鮮やかな宝石がふんだんに使われるようになりました。 人々の心を捉えたのは、大胆な曲線や複雑な細工が施された、豪華絢爛な宝飾品です。大きく揺れるイヤリングや、幾重にも連なるネックレス、指先を華やかに彩る指輪、腕を優雅に飾るブレスレット、そして頭上に輝くティアラなど、様々な装飾品が人々を魅了しました。デザインは、単に美しいだけでなく、力強さと存在感を兼ね備えています。バロック様式の宝飾品は、当時の職人の高度な技術と、豊かな創造性を物語っています。緻密な石留めや、精巧な彫刻、そして大胆なフォルムなど、細部にまでこだわり抜かれた作品の数々は、現代の私たちの目から見ても、息を呑むほどの美しさです。光と影の対比を強調した表現や、動きのあるデザインは、まるで宝石に生命を吹き込んでいるかのようです。バロック時代の宝飾品は、単なる装飾品ではなく、芸術作品として、時代を超えて輝き続けています。