Tubogas

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技術

しなやかで美しい管状装飾:チューボガス

チューボガスという名称は、イタリア語で『ガス管』を表す言葉に由来しています。その名の通り、金属の帯を螺旋状に巻き付けて管状の鎖や飾りを作り出す技法を指します。この独特の作り方は、複数の平たい金属の帯を細い管状の芯材にきつく巻き付け、その後芯材を取り除く、あるいは芯材を溶かすことで中空の管状の鎖に仕上げるというものです。出来上がった鎖は、まるでガス管のような見た目を持つことから、チューボガスと呼ばれるようになりました。 この技法の起源は古く、古代エジプトまで遡るとも言われています。古代エジプトの遺跡からは、金や銀で作られたチューボガスに似た装飾品が出土しており、当時から既にこの技術が存在していた可能性を示唆しています。その後、長い年月をかけて様々な地域へと広まり、各地の文化の中で独自の進化を遂げてきました。時代と共に素材やデザインも多様化し、金や銀だけでなく、銅や真鍮などの金属も用いられるようになりました。 現代の宝飾品に見られる洗練されたチューボガスは、19世紀後半から20世紀初頭にかけてイタリアで大きく発展を遂げました。特に1920年代から1940年代にかけて、ヨーロッパで大変な流行を見せました。この時代のチューボガスは、アールデコ様式の影響を受け、幾何学模様や直線的なデザインが特徴です。ネックレスやブレスレット、イヤリングなど、様々な宝飾品に用いられ、当時の女性たちの間で大変な人気を博しました。 第二次世界大戦下の物資不足も、チューボガスの普及を後押ししたと考えられています。貴重な金属の使用量を抑えながらも、見た目には華やかな装飾品を作り出せるという点が、当時の状況に合致していたのです。限られた資源を有効活用しながらも、美しさを求める人々の願いに応える技法として、チューボガスは重宝されました。現代においても、その独特の風合いと歴史的背景から、時代を超えて愛される装飾技法として、宝飾品の世界で確かな存在感を放っています。